問答無用な下剋上ルール。

着物の格とは

着物の格付けとは、柄の置き方や素材などにより、身に着けるシチュエーションが決められていることをいいます。一般的に「礼装」と「礼装以外」に分かれており、フォーマルな場面であればあるほど、ルールを守ることが求められます。
 

着物一枚だけなら、カジュアルなものがいい


一枚買うならどんな着物がいいですか?、とよく聞かれます。

たぶん一般的なお店などで訊くと、色無地や江戸小紋などをお勧めされるのではないかと思います。
理由は帯によって、お茶会などのフォーマルからお食事会くらいまではカバー可能なこと。
私のような普段着物な人にとっては、そのレベルはむしろフォーマル寄りすぎて帯に短したすきに長し、意見はまるで違ってくるのですが、まあそこは置いといて。

これらを薦められる理由はもうひとつあって、そのポイントが「紋」。家紋の「紋」です。
これは私が常々お話ししている「和服」の方のルールなので細かい説明はここでは差し控えますが、無地に近いタイプの着物にこの「紋」をつけると、アーラ不思議、あっという間に格があがるという下剋上なルールがこの世界にはあるのです。
それも一つ紋、三つ紋、五つ紋、と数が増えるごとに格が上がっていくという出世魚みたいな仕組みです。



着物の格を決めるカラクリ


着物の値段というのは、例外もありますが、基本的にどれだけ手間がかかったか、という部分で決まります。つまり人件費というか手間賃。
そう考えると色無地というのはある意味友禅などの絵羽もの(絵が描かれているもの)に比べればお手軽ということになります。
そんな色無地がフォーマルの世界で大きな顔をしているのには、こんなカラクリがあったわけです。
 
ちなみにこれって武士の裃に因を発していたりもするのですが、こういう歴史的な事例をアレンジしたルールは結構多いです。


羽織はフォーマルよりのジャケットと思えばいい


昭和の生まれのおばあちゃん、お母さん世代の方は一枚は黒い羽織をお持ちのはずです。
入学式や卒業式などでそういう姿を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

これも似たような話なのですが、黒羽織を羽織ればカジュアル寄りの着物でも、一気にフォーマルになるというルールが流行り、昭和のある時期に一大ブームを巻き起こしました。
今はあまり見かけなくなってしまったルールですが、いうなればTシャツ&ジーンズにジャケットを羽織るようなものでしょうか?
 
ちなみにこれは深川芸者から因を発しているので、比較的新しいルールです。



他にも戦時中、訪問着の制作が困難だった時期に、それに代わる付け下げという”訪問着お手軽版”みたいな着物も登場し、今ではそれはカジュアル版訪問着のような形で定着していたり、逆にうん百万するような大島の着物もお茶会には不可、など、意外とご都合主義というかなんちゃってなとルールが和服の世界には実はたくさんあります。
それだけ時代時代に即して、柔軟に変化を経てきたということなのです。


そう考えれば、今の時代の着物は、また今の私たちのルールでいい、そんな風には思えないでしょうか。一式そろえるなんて、着物にはまってからでいいと思う(笑)
洋服だって、ブラックフォーマルとかまず最初に全部揃えませんよね?


これを書いた人★

洋服で飲みに行くと「あれ着物じゃないの?」といわれてしまう普段着物研究家。
沖縄独特の茶道「琉球茶道ぶくぶく茶」 の東京分室主催。
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